レビュー: 中国報道の「裏」を読め! – 富坂聰
ここ数年での世界経済における中国の重要性は以前とは比較にならないほど高まっている。最近のニュースを少し見ただけでも以下のような記事が目に飛び込んでくる。
Google、中国事業閉鎖の可能性 言論の自由の問題めぐり – ITmedia News
米Googleは1月12日、中国の検索エンジンGoogle.cnとオフィスを閉鎖する可能性があることを明らかにした。人権活動家に対するサイバー攻撃を理由としている。
同社はこの決定のきっかけとなった出来事として、12月に起きた「高度に組織化された」サイバー攻撃を挙げている。当初は単なるセキュリティ事件に見えたが、まったく事情が異なることが分かったという。
今回の攻撃や、過去1年のWeb上の言論の自由を抑えようとする動きから、Googleは「中国での事業の実行可能性を見直すべきという結論を下し、Google.cnの検索結果の検閲を進んで続けることはしないという決定に至った」という。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1001/13/news028.html
2009年末の世界時価総額ランキング(単位/億ドル)
(日本経済新聞2010年1月12日朝刊)
- 中国石油天然気 中 3,527
- エクソンモービル 米 3,264
- マイクロソフト 米 2,754
- 中国工商銀行 中 2,661
- ウォルマート・ストアーズ 米 2,094
- ペトロブラス ブラジル 1,981
- HSBC 英 1,979
- グーグル 米 1,958
- 中国建設銀行 中 1,957
- アップル 米 1,904
09年新車販売、中国が初の世界一 大幅減の米国抜く
米調査会社オートデータが5日発表した2009年の米国の新車販売台数は、前年比21%減の1042万9553台となり、1982年以来27年ぶりの低水準に落ち込んだ。すでに発表済みの中国の1~11月累計は1223万台。年間ベースで中国が初めて米国を抜き、世界最大の自動車市場にのぼりつめた。
http://www.asahi.com/business/update/0106/TKY201001060089.html
一時期ほどの勢いは衰えたとはいえ、中国関連経済はいまだ成長している。日本国内株でも中国関連のIRが出ると株価が騰がることも珍しくない。2010年の中国の実質GDPも9%の成長は確実というのが専門家の見方だ。
しかし、その成長の裏にはさまざまなリスクや歪みが潜んでおり、その実態は海外に正しく報道されている訳ではない。本書『中国報道の「裏」を読め!』は、タイトルどおり、中国報道で秘匿、捏造される事実とその理由をひとつずつ紐解いていく内容となっている。
目次
序章 中国メディアの現在
第1章 中国経済の危うい実態
1 経済の“構造転換”に迫られる中国
2 中国ははたして“アジアの米国”になるか
3 グリーン産業が膨大な不良債権を生む?
4 出稼ぎ労働者を苦しめる治安の悪化
第2章 変容するナショナリズム
5 いったい誰のためのオリンピックだったのか?
6 中国人の“大国意識”をのぞく
7 “略奪ブロンズ像”をめぐる反仏キャンペーン
第3章 上に汚職あれば、下に不正あり
8 “汚職天国”中国で官僚の摘発が進む「裏事情」
9 政府の庇護のもとで暴利を貪る“十大企業”
10 官僚の“ムダ遣い”に支えられる中国経済
11 侮れない「ウソから出た実」
第4章 社会に蔓延する黒いストレス
12 ネット時代の魔女狩り――過激な「人肉検索」
13 軍人襲撃事件でわかった社会に蔓延る“病巣”
14 日本のメディアではわからないチベット騒乱の“内幕”
15 ウイグル問題は「テロとの戦い」なのか
第5章 中国の未来は明るいか?
16 “世界の工場”中国の労働者が苦しむ「新法」
17 胡錦濤の肝いりで農村に革命が起きる
18 “散歩デモ”の頻発が意味するもの
19 「幸福指数」から見た中国人の生活実感
あとがき
日本にいてはわからない中国の実情が垣間見れておもしろく読めた。中国における対日感情が、四川大地震での寄付などを経て意外と好感触ではあるが、中国が経済大国化するにつれ、「どうでもよい」国と認識されつつある点や、共産党主導の経済政策の実情などは興味深かった。さらに白眉なのが、チベット問題の複雑さを追った解説。これは日本のニュースだけを見ていては、ことはそう簡単な問題ではないと気づけないだろう。この部分は個人的にはもっとボリュームが欲しかった。
ややもすると中国に対してネガティヴな印象を与えかねない本書のタイトルだが、内容からは著者が常に中立な立場からさまざまな事象を論じていこうとする姿勢がみてとれる。これが中国よりだったり、日本での販売戦略のために嫌中をターゲットとした、嫌中派の溜飲を下げるだけの内容だったら、ただのゴシップ本に終始しただろう。本書は、現在の中国の置かれている状況と同様、微妙で危ういバランスの上に成り立っている。
日本国内でも中国からの労働者が珍しくなくなっているが、彼らとつきあうのは時として非常に厄介である。私も仕事で携わり苦労させられたことがしばしばある。私の感覚からすると、頑固であったり、攻撃的であったり、モラルが欠如していたり……。彼らのそういった気質を「国民性」とひと括りにしないでその要因を探っていく本書は、身近な中国人とよりよくつきあうためのよいヒントを与えてくれるだろう。






